
物質科学を研究する島根大学の宮崎英敏教授にインタビューしました
WO₃窓の環境評価と製造課題
パンダ回収隊長
三酸化タングステン(WO3)フォトクロミック窓(フィルム)は、ウレタン等の透光性の高い樹脂に、粒子サイズの小さいWO3(粒径100nm以下)を包埋することで実現できます。
トータル的なコスト試算は行っていませんが、本技術は厚さ0.1mm程度の膜で良いこと、タングステンは樹脂に対して2~3%程度で良いこと、劣化の際に膜の張替えだけで良いこと、廃棄の際は燃焼によりタングステンを容易に回収できることが優れた点と言えます。
製造プロセスは全て室温で行えることからCO2排出は少ないですが、製造過程でさらにCO2排出を削減するには、樹脂を硬化させる際にUVランプではなく太陽光を用いることが挙げられます。
宮崎英敏教授
都市部への適用と材料改良
パンダ回収隊長
本技術は、通常は高い透過率を示し、外部からの光の強度が強い場合のみ自動的に膜が青く着色して光を遮断できます。建築物や車などの窓に張り付けることで、5月~9月の日照量の強い時に室外からの光を遮断でき、室温を自動的に調整できます。
また、樹脂とWO3(初期状態は液状原料を使用)を混合した液状原料を用いることから、大面積化が容易であることがメリットとして挙げられます。
一方で、WO3はある程度紫外線の吸収がありますが、樹脂の劣化は起こります。耐候性・汚染耐性などを上げるには、製造した窓(フィルム)の表面に、なんらかのコーティングが必要になると考えています。
宮崎英敏教授
資源循環型照明の実現に向けて
パンダ回収隊長
一般的な照明等の蛍光デバイス材料は、粉末・単結晶・ガラスなどの母相に希土類元素を添加し、高温で場合によっては還元雰囲気で合成されます。対して本方法では、蛍光特性を示す希土類元素を透光性の高い液相樹脂に包埋・硬化により複合化します。
合成過程はほとんど室温程度であること、および高輝度な蛍光デバイスを実現できることが強みです。また、前述のスマートウインドウ同様に、樹脂を燃焼させることで希少な希土類元素を容易に回収でき、合成から廃棄・リサイクルまでを容易に実現化できる次世代蛍光デバイスと考えています。
宮崎英敏教授